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雲井雅人サックス四重奏団 第1回 リサイタル ―2000.12.14―

日 時:2000年12月14日(木)

会 場:三鷹市芸術文化センター「風のホール」


【曲目】

J.S.バッハ(1685-1750) /arr. 成本理香
      パルティータ 第4番 ニ長調 BWV.828(1730頃)

ジャニーヌ・リュエフ(1922〜1999)
 合奏四重奏曲(1955)

               休憩

生野 裕久(b.1957)
           ミサ・ヴォティーヴァ(1999)“東京初演”

デヴィッド・マズランカ(b.1943)
     マウンテン・ロード(1997)“日本初演”
       


【曲目に関する覚え書き】  

リュエフのコンセール(合奏曲)は、デファイエ四重奏団の名演がレコードで残されている。その余りにも豊麗な響きに魅せられて、サックスの道に進む決意をした人は多い。同時に、その響きに目が眩んで自分の音を見失いそうになった人もたくさんいたことであろう。かく言う私もその一人で、デファイエの音はデファイエにしか出せないと悟るのに、随分と時間がかかったものだ。  この作品は、バッハに触発されて生まれたのだと以前から言いならわされてきた。初学者の頃には、どこに共通性があるのかさっぱり解らなかったが、バッハを少しずつ知るにつれ、これはフランス風序曲(符点のリズムが特徴的)を持つ組曲やパルティータの構成に倣ったものであることが解ってきた。本日は、バッハのそういった作品の一つである鍵盤のためのパルティータを取り上げてみた。バッハを知ることによって、リュエフにも改めて出会いたい、そんな思いがある。


生野裕久氏は、旺盛な創作活動のかたわら洗足学園大学で教鞭を執っている。氏が自作について、以下のように語ってくれた。  タイトルは「随意ミサ」と訳されるが、私自身は無神論者であるし、この曲においても宗教的な「祈り」の意味はまったく無い。 しかし、人は誰しも「祈り」の気持ちを抱くことがある。たとえば家族が病に臥せるようなことになった時など。この曲の作曲中はまさにそんな中にあった。回復への「祈り」が作曲のきっかけになったことは言うまでもないが、ひいては広く人の命、 更に地上に生を受けたすべての命について思い及ぶこととなった。言うなれば、「命」とそれをはぐくむ「自然」へのささやかなる「祈り」なのである。 初演は昨年、コレジオ サックス四重奏団により名古屋で行われたが、今夜は一部改訂した版による演奏となる。追伸 家族は今、それなりに元気で過ごしている。


マズランカには「子供の夢の庭」という吹奏楽作品があって、私は留学時代、その初演に参加する栄に浴した。他の作曲家には見られないその不思議な響きが、ずっと記憶の底にあった。あれから20年、今夜彼の作品を演奏できることは、大きな喜びである。以下は彼自身の解説。
この曲「マウンテン・ロード」は私の内的告白であり、その一音一音は私の想いです。構成はバロック・カンタータを模範とし、様式は私の長年に渡るバッハ研究を反映しています。私のカンタータに言葉はありませんが、「人みな死すべきもの」と「私はどこへ向かおう」の二つのコラールを中心に展開されています。第1、3、4、5、6の各楽章で「人みな死すべきもの」は大きく展開され、「私はどこへ向かおう」は第1楽章に部分的に、第2楽章では完全な形で現れます。

この曲の題名は、作曲期間中に私の見た夢に由来します。夢の中で私は、道路工事夫の一員として山岳地帯にいました。足元には雪が溶け残っていましたが、空は晴れ上がり、とても心地よい春の日でした。私達は山の自然がもたらす快活な気持ちにおされ、新しい道を造っていたのでした。目覚めた時、私にはその夢が新しい生命と新しい精神生活の幕開きの暗示に思えてならなかったのです。
生命力と喜びに溢れたこの音楽には、「人みな死すべきもの」という標題によるパラドックスが含まれており、「私はどこへ向かおう」でそれが強められています。前者の標題は、死というものが避けられないものであることを示しているのであり、病的な意味でも人類の滅亡を意味しているのでもありません。死とは、終末というより変化なのです。成長の過程というのは、ある一つの思想なり感覚を希求し、そこからまた新たに別の思想へ開かれていくことの連続です。しかし結局、肉体の死という現実は存在します。そのことは、この世のすべて形あるものへの私達の愛着を浮かび上がらせます。それは私達のいかなる経験をも限りなくいとおしく、限りなく哀しいものにします。そしてそれはまた、すべて形あるものとそこから生ずる行いからの、避けようのない離脱をも意味するのです。


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