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雲井雅人サックス四重奏団 第3回 定期演奏会―2004.7.07―

パルティータ第6番 BWV 830(1730頃)  J. S. バッハ(1685〜1750)/arr.八木澤教司
1. トッカータ
2. アレマンダ
3. コレンテ
4. エール
5. サラバンド
6. テンポ・ディ・ガヴォッタ
7. ジーグ

ステッピング・アウト(1989)  デヴィッド・ケックレー(b.1947)
1. Minimum Overdrive
2. Midnight Reflection
3. Anonymous
4. An Easy Burden

******* 休憩 *******

3つの教会ソナタ(1766〜1780)  W.A.モーツァルト(1756〜1791)/arr.雲井雅人
1. アレグロ K.68
2. アンダンテ K.67
3. アレグロ K.336

サクソフォーン四重奏曲(1962)  クロード・パスカル(b.1921)
1. 活発に
2. コラール - おそく
3. ワルツのテンポで
4. 生き生きと



やむを得ぬ音楽上の理由により、チラシ等でお知らせしていたスティラー作品に代えまして、ケックレー「ステッピング・アウト」を演奏いたしますことをどうかご了承ください。
さて今夜は、サックス四重奏のために作曲された作品を2曲と、編曲された作品を2曲聴いていただきます。バッハは、第1回のリサイタルから連続して取り上げている作曲家です。そして、今回は無謀にも(!)モーツァルト作品にも手を出してしまいました。

■私たちの四重奏団にとって、プログラム・ビルディングの根拠は、まず「自分たちがその作品から得るところがあるかどうか」です。バッハは、それこそ「汲めども尽きぬ」という言葉がぴったりで、演奏中の私たちに作品が絶えず多くのことを語りかけてきます。バッハの他の器楽作品の例に漏れず、この「パルティータ第6番」でもさまざまな舞曲の形式を借りて、作曲家は技法の限りを 尽くし、思いきり想像の羽根を伸ばしています。そういう作曲家の面白がりようが演奏家を楽しませ、ついでに(といっては語弊があるかも知れませんが)聴き手に伝わるといった感じでしょうか。譜ヅラからはバッハが「良い仕事をしている」ことがひしひしと伝わってきて、奏者はどの音符もゆるがせにできないのです。アレンジは、吹奏楽のみならず様々なジャンルで、近年めざましい活躍をしている八木澤教司氏にお願いしました。

■ケックレーは、1947年生まれのアメリカの作曲家です。ワシントン大学を卒業し、クリーヴランド音楽院から哲学博士号を得ています。日本が好きで何度も来日しているようです。タイトルの「ステッピング・アウト」は、back and forthのダンス・ステップを踏んでいるうちに、少しずつ作品の様相が変化して行くさまを表しています。日常的な感情から、演奏者と聴き手をいつの間にか不思議な場所に連れて行く力を持った作品です。第1楽章「最小の増幅装置」:ミニマル風の小さなステップの音型がファンキーに盛り上がって行きます。第2楽章「真夜中の反射」:夜中や朝早くにふと感じる、とりとめのないノスタルジックな感情を暗示しています。第3楽章「作者不祥」:中世の素朴なモテットを想起させる楽章です。第4楽章「易しいリフレイン」:全音階的な聴きやすいリフレインで出来ています(各楽章の題名は直訳。本来どの単語も潜在的意味を内包している)。日本初演。

■「教会ソナタ」は17の短い曲からなる小品集です。原曲は弦楽合奏とオルガンのために書かれています。本日はそこから3曲を抜き出してお聴きいただきます。弦楽器奏者やピアニストの友人たちが異口同音に言うには、「モーツァルトはムズカシイ。モーツァルトはコワイ」らしいです。「らしい」というのは、私たちサックス吹きはモーツァルトにまったく触れることなく修業期間を終 え、そのコワサとやらを体験せずにプロになってしまうからです。Fl.Ob.Cl.Fg.などの木管楽器のために名作を残していることを常々うらやましく思いつつ、「やっぱりサックスでモーツァルトなんてちょっと変だよな」という気持ちで長年過ごしてきたのでした。その考えを改め、今回思い切って取り上げた結果、モーツァルトを敬して遠ざけてきた今までの日々を後悔することとなりました。
何気ないフレーズに含まれる豊かなニュアンスは、演奏する喜びをもたらしてくれます。今さらこんなことを言っているなんて、音楽家として恥ずかしくもありますが、私たちモーツァルト初心者が、嬉々として演奏している様をご覧いただければ幸いです。

■現代フランスの作曲家パスカルが1962年に作曲した「サクソフォーン四重奏曲」からは、最先端ではないが、それだけによりリアルな現代というものを感じます。その曲調の親しみやすさから、サックスを学ぶ者なら修業時代に必ず一度は手がける曲です。あふれるような才気を感じさせる一方で、なにか「普段づかいの器」のような気安さも受けるのです。大人になってから(という言い 方もおかしいですが)この曲を吹いてみると、以前は気付かなかった洒落っ気や大胆さが、よりいっそう強く感じられるようになりました。フランスの一流紙「ル・フィガロ」に音楽評論を執筆し、パリ音楽院では有力な教授として運営に携わるなど、実務者としても活躍したパスカル。どの楽章も隅々まで精力的かつ緻密で、演奏者を休ませないその作風からは、作曲者の人物像がありありと見えるようです。


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