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雲井雅人の「小言ばっかり」

( 2014/10 → 2013/10 )


2014/10/31(金)  雲カル第12回定演のプログラム
みなさま、ご無沙汰しております。また雲カル定期が近づいてまいりました。曲目解説を先行公開いたします。もしご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、トップページの情報をご覧になってください。よろしくお願いします。

今回のプログラムは、アメリカにちなんだ作品を集めて聴いていただくこととした。1曲目の作曲家ジョン・マッキーは、アメリカの売れっ子作曲家である。現在41歳。私は「なにわ〈オーケストラル〉ウィンズ」のメンバーとして、吹奏楽曲の翡翠(かわせみ) を演奏したことがあるが、その鮮烈な感覚には驚かされたものだ。サックスのためには、この作品の他にソプラノの協奏曲がある。サックス四重奏のための「Unquiet Spirits」(直訳すれば「落ち着かぬ精神」)は、2012年にアメリカの若手サックス四重奏団「Zzyzx Quartet」(なんと発音するのか想像がつかない)のために書かれた。三つの楽章とも、タイトル通り不安定な要素をいっぱいに詰め込んだ音楽となっている。第1楽章は絶え間ない騒がしさ、第2楽章はどうにもギクシャクしたダンス、第3楽章は情け容赦ない16分音符とひっきりなしの変拍子。作曲家にとって、サックス四重奏というアンサンブル形態は、新しいオモチャであるかのようだ。

チェコの作曲家アントン・ドヴォルザークは、音楽院の院長としてアメリカ滞在中にこの作品の着想を得た。黒人霊歌などのアメリカ音楽の影響のもと、故郷ボヘミアとアメリカ中西部アイオワ州の人や自然に共通するものを感じ取り、たった2週間という非常な勢いでこの作品を書き上げたと言われている。今回のコンサートでは、阪口新先生の編曲を取り上げた。阪口先生は日本におけるクラシック・サックス開拓者としての名声が確立しているが、プロの音楽家のスタートはチェロ奏者としてであった。先生が著した教則本や小品集などには、必ずチェロのための小品が収められていて、この楽器への愛着が感じられる。レッスンの時には、フレージングの説明で必ず弦楽器のボウイングのことに言及された。チェロが大活躍するこのドヴォルザーク「アメリカ」も、先生にとっての大切な作品だったに違いない。この編曲は、原曲よりも一音低く移調され、またサックスの音域の狭さのせいで高音域を1オクターブ下げざるを得なかった箇所もある。サックスには不可能な弦楽器特有の技法もある。それを押しても、この作品をサックス四重奏でやってみたかった阪口先生の心意気を感じるのだ。

サイモン&ガーファンクルの歌の数々は、20世紀後半のアメリカ・ポピュラー音楽の最良のものだと私は信ずる。そしてある日「サックス四重奏で演奏してみたい!」と思い立った。尚美学園大学大学院に学ぶ期待の若手・佐藤信人君のアレンジでお送りします。

フィル・ウッズは、ジャズ界の大御所プレーヤーで、1950年代から現在までの長いキャリアを誇る。この「3つの即興曲」は、4本のサックスのみという、ジャズの世界では比較的珍しい編成のために書かれている。譜面は綿密に書き込まれており、クラシック・サックスのトレーニングで育った奏者でも演奏できるように配慮されていると思われる。第1楽章の後半にだけ、コードネームのみ記されたアドリブのセクションがある。第2楽章は、ソプラノのソロに始まりアルト、テナーと大らかな旋律が歌い継がれてゆく。第3楽章は、多分にコンセプチュアルな面があり、予想を裏切る音の並びや変拍子がスリリングである。ニューヨーク・サクソフォーン四重奏団に献呈された。

プログラムの最後に、ジョージ・ガーシュウィン「ポーギーとベス」から5曲を選んで、ヘムケ先生のソロと雲井サックス四重奏団のためのアレンジをご用意した。長年にわたり演奏家・教育者として世界のサックス界を牽引してきたヘムケ先生だが、演奏活動の多くを、ダールやフーサなどのアメリカの古典から現代の優れたサックス作品を紹介することに費やしてきた。しかし数年前のこと、先生はアヴァンギャルド的でないCDを1枚作ろう、それを糟糠の妻に捧げようというアイディアを企画実行した。それがCD「Fascinating Rhythm」であり、今回のアレンジもここに納められたものだ。アレンジャーは、ノースウェスタン大学サックス科出身の若き編曲家、ジョナ・ブラム。師匠の演奏の特質をよく知る者ならではの書法となっている(今回の演奏会のためにヘムケ先生が補筆した)。我々弟子としても、ガーシュウィンを吹く先生に興味津々なのである。


ジョン・マッキー
 Unquiet Spirits(2012)
  Movement T, Movement U, Movement V

アントン・ドヴォルザーク/arr. 阪口新
 サクソフォーン四重奏曲〈アメリカ〉(1893)
  T. Allegro ma non troppo U. Lento V. Molto vivace IV. Vivace ma non troppo

        休憩

サイモン&ガーファンクル・メドレー/arr. 佐藤信人
 スカボローフェア〜サウンド・オブ・サイレンス〜明日に架ける橋〜ミセス・ロビンソン

フィル・ウッズ
 3つの即興曲(1981―2001改訂)       
  T. Presto U. Broadly-Freely V. Fast

ジョージ・ガーシュウィン/arr. Jonah Blum & Frederick L. Hemke
 「ポーギーとベス」からの情景(1935)
   サマータイム〜ベス、お前は俺のもの〜くたびれもうけ〜ゴーン・ゴーン・ゴーン〜アイ・ラブ・ユー、ポーギー


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