2007/01/31(水)
上海報告
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上海は、成田からたったの3時間。機内で打ち合わせなどしていたら、あっという間に着いてしまった。
一夜明けて上海2日目は、星雨児童康健院という自閉症児のための施設を訪ねた。 先生が中を詳しく案内してくださり、設備や教育方針などについて説明を受けた。 この施設は、日本政府のODAの一環として創設されたとのこと。 トランポリンやすべり台、バランスボールなどの遊具、言語指導室などを見学。 園児とそのお母さんたちと共に昼食をとった。 内装や設備の色使いは明るく、清潔な印象だった。 このあと、チャリティーショーの会場である街中の大きな映画館に移動した。 単なるアウトリーチだと思っていたら、大きな会場での歌あり踊りありの一大チャリティーショーに企画が変身していてタマゲタ。 何十万元というお金とアップライトピアノなどの寄付が施設のためにあつまり、会は大盛況のうちに終了した。施設内の部屋でササッとやるつもりだったのが、キツヌにつままれたような気分たが、役に立ったみたいだからよしとしよう。それにしても、短期間でこのイベントを成功に導いた園長さんたちのバイタリティは驚異だ。 夜は、クラブでライブをやったのだが、いまいち手応えはなし。 雲カルがここでやる必然性も感じられない。
三日目は、上海大劇院中ホールでのリサイタル。 昔住んでたアパートの隣人が、上海の日本人学校の教師をしていて、コンサート終了後、楽屋に会いに来てくれた。 なんという奇遇! その彼の説明によれば、このコンサートは大成功だと言えるとのこと。 まず、ブーイングがない(ひどいときは食べている豆を投げるそうだ)。お客さんの私語が少ない。携帯電話を見るのを止めた。アンコールが真剣。 僕も、中国で公演した先達からだいたいの話は聞いていたので、彼にこう言われてホッとした。 拍手がだんだん熱を帯びてくるのを実感できた。 異国の地で演奏するというのは、肩書きや知名度など関係ない「ゼロスタート」なので、僕たちの演奏そのものを楽しんでもらえたという手応えが嬉しかった。
このコンサートでは、僕の弟子で尚美学園大に留学中の中国人青年・王磊君に司会と通訳をお願いした。 曲の紹介、メンバーの紹介とインタビュー、そして雲カルバックでの中国の名曲「二泉映月」のソロと、八面六臂の大活躍だった。 のみならず、中国と日本のカルチャー・ギャップや運営の仕切りの悪さなどの狭間に立つことになって、想像を絶するストレスに見舞われながらの本番であった。 それらのことを完璧にやりこなした彼は、終演後、楽屋で号泣していた。 僕ももらい泣きした。 この旅は、まさに参加者たちにとって、真の意味での「修学旅行」なのであった。
四日目はいろいろあった。 公開レッスンでは、昨年大阪で行われた室内楽コンクールで優勝した団体を指導した(ピアソラとデザンクロ)。 正直言って、そのうまさに驚いた。 もっと荒っぽいものを予想していたのだが、きたない音は出さずセンスが良く、しかも熱い演奏だった。 まとめようというのとはまったく違う、音楽の核心に殺到しようとする気概を感じた。 そして謙虚さ、頭の回転の早さ、指示に対する反応の良さなどなど。 クセっぽさはあるのだが、あまりそれを矯正しようとしない方がいいのかななどと思った。 将来がとても楽しみな団体だ。
街を歩くと、ここが中国であることを忘れてしまいそうになる。それほど賑やかで華やかな町並みなのだ。 デパートに入ると、日本の店より先を行っているような感じさえする。 アジア最先端の都市というのは誇張ではない。 しかし、一歩路地に入れば、そこには古い上海の生活が露出している。 そのギャップもまた面白い。
打ち上げは熱い男の出現により、非常に盛り上がった。 東京と上海を行き来する実業家でアマチュアサックス吹きかつ上海サックス研究会名誉会長の小林さんという方が、実に熱い! なんと、過去に東京において僕のコンチェルトのバックで吹いたことがあるというから驚いた。 この人が上海のサックス・シーンのパトロンのような存在だ。 彼がいれば、上海のサックス界はこれからもますます隆盛となるだろう。
日本にいるときは、忙しさのためメンバー同士で深く語り合う機会は案外少ないのだが、ここではひさびさにそれができた。 旅先の時間というのは、いつもと流れ方が違う。
日本に着いたら、空気がきれいで景色がくっきり見えるなことと、建築物のデザインがおとなしいことなどに気付いた。 道路を車で走っていても、落ち着いた気分で乗っていられる。 排気ガスの臭いも上品だ。 クラクションの音を聞くこともない。 上海のタクシーの暴走ぶりときたら、それこそ筆舌に尽くしがたいほどで、日本人の感覚からすると「命懸け」で乗っていなくてはならないほどだ(しまいには慣れたけどね)。 クラクションは鳴らしまくる。 中国の車は、クラクションを鳴らすボタンから壊れるそうだ。 実際に交通事故は非常に多いそうだ。 現地駐在の日本人記者や会社員は、危険なので自分では車の運転はしないという。
「上海は固い岩盤の上にあるので、絶対地震がないのだ」と現地のガイドが断言していたが、本当に大丈夫なのか。 耐震強度などはどうなっているのか。 それにしても本当に数多くの高層ビルが乱立している。 上海の高層ビル群は、自己主張が強い。 屋上の部分にガンダムの頭みたいなのを乗っけているのや、エンパイアステートビル風、帽子、袴、球など、どこかひとひねりしないと気がすまない風がある。 それらが夜にはライトアップされて、さらに存在を主張する。 上海という街の勢いを象徴しているように思った。 中国語の強い口調やはっきりした態度というものとも通底するものがあると思った。
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