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雲井雅人の「小言ばっかり」

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2005/09/30(金)  ありがとうございました
昨日の雲カルリサイタル、津田ホールは満員だった。
信じられないほど大きな拍手。
終演後、たくさんCDが売れて、たくさんサインをしました。

・・・自分に起こった出来事ではないような気がする。

ご来場くださった皆さま、本当にありがとうございました。
何か良い印象をコンサート会場から持ち帰っていただけたでしょうか。

僕にとっては、今年の夏がやっと終わったという感じ。
長い夏でした。

実はこの夏の初め、不覚にも一時体調をくずした。
そのさなかにもコンチェルトの本番があったりして、それは何とか夢中で乗り切った。
その後ガタガタと健康状態が崩れてゆく中で、なおも次の仕事に備えて練習をしていると、笑いたくなるほど情けない音しか出ない状況に陥ってしまった。
仕方なく、入院という仕儀に相成った。
検査と点滴三昧の日々。
退院後は、焦る気持ちを抑えながらのリハビリ練習を経て、どうにか復活。

昨夜のコンサートで、プログラムの最後の方でちょっとへたばりそうになってしまった。
それをなんとか音に出さないようにするために苦労した。
「夏の初めの不摂生がここに出たかな」と思った。
反省です。

まだまだやりたい曲はある。
なので、また来年もやります。
みなさま、今後ともどうかよろしくお願いします。


2005/09/21(水)  「シャコンヌ」
J.S.バッハの「シャコンヌ」は、「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」の終曲であり、主題と30の変奏からなる。
この曲については、聴く人それぞれに大切な音楽的体験があるだろうと思う。
録音にしろ実演にしろ、この曲を初めて聴いたときに受けた特別な感情が、一人一人の心の中にあるのではないだろうか。
そのためだろう、管弦楽、ギター、オルガン、ピアノ(両手用=ブゾーニ、右手用=ブラームス)など、さまざまな楽器のために編曲がなされている。
他人の作品のみならず自作からの借用や編曲が大好きなバッハ自身が、カンタータの中やチェンバロ用に編曲を残していないことが不思議に思われるほどだ。
指揮者ならオーケストラで、器楽奏者ならそれぞれの楽器で、この作品を再現したいと思いはじめるのだ。
その昔、私が「シャコンヌ」を初めて聴いたころ、その後自分がこの作品を奏することができるようになるなどとは夢にも思ってもいなかった。
しかしサックス吹きとなった今日、やはりその誘惑に抗うことは出来なかった。
伊藤康英のサックス四重奏用編曲は、アプローチそのものが過去の諸編曲とは異なる。
それは、冒頭の部分を聴いてただくだけでお分かりになるかもしれない。
サックス四重奏のために(もっと言えば雲カルのために)新たに発想された「シャコンヌ」がここにある。
伊藤康英の作品リストには、無造作にカウントしただけでも、サックスのために書かれたオリジナル作品が27曲、編曲作品が47曲ある。
思い起こしてみると、その多くの初演や再演に私は関わってきたことになる。
それらはいつも、私のみならず数多くのサクソフォーン奏者たちに大きな演奏の喜びをもたらしてくれた。
ここにまたサックスのための大切なレパートリーが加わったことを喜びたい。


2005/09/20(火)  「チェンバー・シンフォニー」到着!
雲カルの新しいCD「チェンバー・シンフォニー」(CAFUAレコード CACG-0074)が僕の手元に届きました。
http://www.cafua.com/shinchaku.htm

このCDは楽しげな雰囲気にあふれています。
自分で聴いていてもかなり面白いです。
なにしろ、これをレコーディングしたのは約1年前なので、そのときの苦しかったことなど忘れて聴けるのです。
ギャラントという面でも、エキセントリックという意味でも、これに似たモノはないと思います。
ぜひたくさんの人に聴いていただきたいです。

「死ぬまでに1枚でいいからレコードを出したい!」というのが、僕の音大生の頃の夢でした。
プロになった頃には、レコードの時代は終わってしまっていましたが、幸運に恵まれ、今までに何枚かのCDを出すことができました。
どれも僕にとっては宝物のようなものです。

「チェンバー・シンフォニー」の発売と同時に、長らく廃盤になっていた「ドリーム・ネット」(CAFUAレコード CACG-0075)が再発売されます。
このCDにはちょっと思い入れがあります。
10年ほど前、レコーディングや本番からやや遠ざかっていた「中だるみ」のような時期があったのですが、そんな自分にカツを入れるために、自費でCDを出そうと思い立ったのでした。
録りためたライブ音源をレコード会社に持ち込んだところ、社長から「ウチで流通に乗せましょう」とのお言葉をいただいて誕生したのがこのCDです。
デビューアルバム「雲井雅人サクソフォーン・リサイタル」(キングレコード、廃盤)が出たときは、「身に余る光栄」という感じで、信じられないほど嬉しかったものですが、この「ドリーム・ネット」はまた別の意味(再デビューのような感じ)で大切なCDなのです。

10月に出る「ザ・サックス」別冊付録の映画音楽のCDも、マスタリングが終わって上がってきました。
自分としては、好きな曲を好きなように吹けた感じがして、かなり気に入っています。
雑誌ですから、今まで僕の演奏を聴いたことがない方々も買ってくださるかもしれません。
そういう人たちに、これを聴いていただけると思うと、とても嬉しいです。
演奏家として、こういうチャンスがあることに感謝です。


2005/09/19(月)  雲井塾
10月1(土)/2(日)、「雲井塾」という催しを開きます。
今回の管打楽器コンクールの課題曲である、イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」、ラーション「コンチェルト」の3曲を取り上げて、公開レッスン形式で勉強会をしようというものです。
もちろん、講師陣によるデモ演奏もたっぷりあります。
どなたでも受講できます。
場所は、三鷹の「ラ・フォルテ」というコンサートスタジオ付きレストランです。
レッスンのあとレセプションも予定しています。

10月1日:
八木澤講師による特別講座 13:00〜15:00
公開レッスン 15:30〜19:00
イベールはなぜ難しいのか、練習してもしても指が転ぶのはなぜなのか。
これは僕自身が知りたいことでもあります。
そのナゾに、林田和之講師、塾長雲井および作曲家の八木澤教司氏とともに迫ります。
フレーズの構造が分かれば、ミスを減らすことができるのです!

10月2日:
公開レッスン 10:00〜12:30
アルペジョーネ・ソナタという古典の名曲を、どうやってサックスで違和感なく表現するかということについて、私雲井と一緒に考えましょう。

公開レッスン 13:30〜16:00
そして、大曲ラーションのコンチェルトをどうやって攻めるか。
この曲で国際コンクールに優勝した原博巳講師から、その方法を伝授してもらおうという企画です。
どんな話が聞けるのか、私自身も楽しみです。

受講を希望される方は、下記のホームページからお気軽にお申し込みください(または各講師あてでもかまいません)。
いずれの曲も、全曲を吹き通す必要はなく、ご自分の興味のある部分や課題を抱えている点について、私たちが一緒に考えたいと思っています。
ピアニストはこちらで一応用意していますが、ご自分でお連れになっても構いません。

ラ・フォルテ
http://homepage2.nifty.com/laforte/concert++.htm
tel:0422-79-7307
fax:0422-79-7317
mail:laforte@nifty.com


2005/09/16(金)  ラーション終了
ラーション「サクソフォーン協奏曲」の本番が、無事に(とは言いきれない面もあったかも…)終わりました。
まったく、命がいくつあっても足りないような曲だ。
ともあれ、この曲を初めて人前で吹いたのだ。
そのことには満足しています。
二十数年間思い続けてきた曲を、初めてお披露目できたのだから。

来年4月にも名古屋でやる予定です。
これからも大切に演奏してゆきたい作品です。


2005/09/04(日)  サイトウキネン無事終了
「サイトウキネン・フェスティバル松本」の仕事、無事終了しました。
武満作品のたった3分ほどの出番のための5泊6日でしたが、充分楽しんできました。
コンサートを聴いたり、オケのリハを見学したり、街を歩き回ったり。
自分の練習時間も確保しました。

ホテルのロビーには、神々が闊歩していました。
音楽の神だけじゃなく、詩の神、放送の神、ビジネスの神たちも。
僕と同じフロアに宿泊している神もいました。
腹が出てたり、猫背だったり、しわくちゃだったり、異様に太っていたりするのですが、神々には皆ただならぬ精気がみなぎっているのでした。

サイトウキネンといえども、音楽家たちにとっては、いつものように自分の職能を発揮する場です。
世界のどこで歌おうが吹こうが、それがおのれの「仕事」なわけです。
でも、ここには「通常業務」とは違う気配が濃厚なのでした。
それが、サイトウキネンという「場」がさせる音楽なのだと感じました。

期間中、小澤さんの70歳祝賀コンサートがありました。
実は10年前僕は、彼の60歳のときのお祝いのコンサートに出演しています。
サントリーホールで、ショスタコーヴィチの「タヒチ・トロット(二人でお茶を)」をやったのです(前の晩にいきなり「サックスがあるみたいだからのってくれ」という電話がかかってきた記憶がある)。
このときは、ロストロポーヴィチ氏が、サモワール(ロシア風卓上湯沸かし器)からお茶を注いで小澤さんにサーブするという趣向でした。
その場面のためだけの「タヒチ・トロット」でした。

今回も、ロストロ氏はケーキを乗せたカートを嬉しそうに押しながら舞台に現れ、小澤さんに振る舞ったのです。
鼻の頭にクリームを付けながら、ケーキをほおばる小澤さん。
この人たちの「元気」には感心します。
いや、「稚気」と言ってもいいかもしれない。
こういうのを見ていると、これがなくなると、音楽家としてはヤバいんだろうと思うわけです。

ステッカーやら切手やら帽子やらポーチやら、サイトウキネン・グッズをたくさん買い込んで帰路についた僕は、かなりミーハーです。
明日から大学が始まります。
できるだけ、「通常業務」に堕さないようにしなくては。


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