[トップページ] [他の月を見る]


雲井雅人の「小言ばっかり」

( 2006/01 ← 2005/12 → 2005/11 )


2005/12/28(水)  冬期受験講習会
今年も音大の冬期受験講習会が終了しました。
昨年は5日間で46回のレッスンをして、短期間にしたレッスン回数としては自己新記録を樹立しましたが、今年は4日間で48回のレッスン。
自己新記録更新です。

去年は、ここでこんなことを書いています。
「受験生の皆さんはこれからが大変でしょうけど、本番ではコンディションを整えて悔いのない演奏をしていただきたい。一つ申し上げたいのは、『音楽が好きだという気持ちを枯らさないで』ということです。エチュードやスケールを一生懸命練習するのは当然のことなのですが、そのことだけをしていると、往々にしてつまらない細部のことのみに気持ちをとらわれて、苦しげな演奏になってしまうのです。自分が好きなメロディー(クラシックじゃなくても良い)を、ウォーミングアップのときに伸び伸びと吹いてみるだけでも、心が潤うのではないかな。その気持ちのまま、エチュードの中の易しいところを吹いてみると、案外楽しくなるかもしれません。」

そういうわけで、今年はレッスンの一部に、マイナスワンのCDを用いて、ポップス風の楽しいメロディーを初見で吹いてみるということを取り入れました。
厳しかるべき受験講習会のレッスン室に、楽しげなカラオケの音が響くというのはやや違和感があるような気がしましたが。

受験生の皆さんは、中学や高校のときに吹奏楽でサックスに出会い、この楽器がとても好きになり、それが高じて専門の道に進もうと決意した人が多いと思います。
そのために、個人レッスンについて、スケールやエチュードを一生懸命勉強する必要があります。
まじめな人ほど、スケールやエチュードをわき目も振らず練習します。
でも、それだけだと音楽が痩せてきはしないかと心配なのです。
ブラスバンドでの集団演奏と、エチュードをコツコツさらうことの中間に、「自分の好きな曲を好きなように吹いてみる」という経験を豊富に持つことがあると、音楽をする心に潤いが保たれるのではないかと思っています。
マイナスワンのCDは、その役割を果せるかもしれません。
もちろん、そればっかりじゃいけませんが。

今回使用したのは、
Jerome NAULAIS : SAXO TONIC Vol.1 for alto saxophone and CD accompaniment (piano, bass guitar, battery and percussion) Billaudot


2005/12/26(月)  嬉しいこと
「ザ・サックス特別号」の売れ行きが良くて増刷されたという話を聞いて、とても嬉しく思った。
付録CDに収録されている僕の演奏も、それだけ多くの人たちに聴いていただけているということで、ありがたいことだと思う。
自分にこういう音が出せるということが、自分を励ましているのだ。

再発売された僕のソロCD「ドリーム・ネット」が、バンドジャーナル誌1月号の「今月のニュー・ディスク」のコーナーで「特選」をいただいたのも嬉しいことだ。
今回あらためて雑誌で紹介されたことで、より多くの人たちに聴いていただく機会ができたようで、ありがたいことだと思う。
2001年の発売当初は、たいした話題にもならずやや拍子抜けした記憶がある。
このCDは、はじめ自費で出そうとして持ち込んだ企画を、レコード会社が流通に乗せてくれたのだった。
自分としては、演奏家としてのキャリアの上で転換点になったCDだという思いがあるので、この再発売は感慨深い。


2005/12/25(日)  ちあきなおみ
さっきNHKの衛星放送で、「ちあきなおみ」の特番をやっていました。
ちあきなおみは、ほんとうにほんとうに歌がうまくて、番組の中のいくつかの歌には心から感動させられました。
僕にとってのクリスマス・プレゼントでした。

何日か前までは、wowowで伊丹十三の映画特集をやっていました。
どの作品も、いったん見始めると目が離せなくって困るのでした(仕事もあるから、無理やりテレビを消さざるを得ない)。
彼の文章といっしょで、どのカットにも意味が感じられて、引きつけられてしまうのです。

二人とも僕は大好きなのに、もう新しい歌、新しい作品が生まれないのが悲しい(ちあきなおみはまだ生きてるけどね)。


2005/12/06(火)  サックスを吹く
愛知県でやっているアンサンブルの演奏会があります。
中部東海地方の方、お時間ありましたらご来場お待ちしております。
http://www15.ocn.ne.jp/〜collegio/

■コレジオサックス 第8回演奏会
 名古屋電気文化会館 ザ・コンサートホール
 12月21日(水)19:00開演
 入場料:一般 3500円 / 学生 2500円

●曲目
 第1部〈コレジオサックス四重奏団〉
  リチャード・ロドニー・ベネット 「サクソフォーン四重奏曲」
  フィリップ・グラス       「サクソフォーン四重奏曲」(日本初演)
  J.S.バッハ/arr.伊藤康英    サクソフォーン四重奏のための「シャコンヌ」 
 第2部 〈ラージアンサンブル〉
  北爪道夫            「カント II」
  生野裕久            「ブルガリア民謡による試み part II」
  J.S.バッハ/arr.堀江裕介    「ブランデンブルグ協奏曲第2番」

[出演者]
雲井雅人 堀江裕介 渡邊愛子 真室香代
佐野功枝 清田朝子 碓井雅史 
山内婦佐子 長内阿由多 中田真砂美
今尾絵里 佐藤こずえ 大嶋漢 日下部任良


2005/12/05(月)  棒を振る
僕が棒を振っている大学吹奏楽団の定期演奏会があります。
お時間ありましたら、ご来場お待ちしております。


■亜細亜大学吹奏楽団 第41回定期演奏会
 武蔵野市民文化会館〈ARTE〉大ホール
 12月18日(日)16:30開演
 入場料:大学・一般 1000円 / 高校生 500円 / 中学生以下無料

●曲目
 第1部
  P.グレイアム 「ゲールフォース」
  E.ウィテカー 「オクトーバー」
  G.ホルスト  「吹奏楽のための第1組曲」 
 第2部 ステージマーチングショウ
  「The Mask of Zorro」
  「The Magician」
 第3部
  L.バーンスタイン 組曲「キャンディード」 


2005/12/03(土)  管打コン終わった
いささか旧聞に属すが、管打コン終わった。
第2次予選までは、成績上位の人々は国際コンクール並の高水準で感心させられたのだが、本選は急に国内のコンクールっぽくなりやや拍子抜けした。

2次の選択曲である吉松、デニソフ、リュエフ、伊藤、バセットあたりの作品をやるときには、思わずアブナイ領域にまで入り込んで、奏者自身が自覚しないうちにすごい表現に辿り着いているということがあるのだろうな。
面白い演奏が多かった。
本選のラーションはオーソドックスなスタイルの調性音楽であり、奏者が分かったつもりになりやすいことから、予定調和的な表現に落ち着いてしまう危険性がある。
そこが僕としては不満だった。

多くの演奏を聴かなくてはならない審査の渦中にいるとあまり気付かないことだが、終わってみると意外なことに感心している自分がいる。
それは、コンクールを運営するシニアの人々の存在だ。
その一人である三善清達運営委員長が、閉会式の時にこう述べていた。
「このコンクールで『我かく戦えり』という記憶があとになって生きてくる」(うろ覚えでスイマセン)。
この人はまた過去に、音楽雑誌で以下のようなことも述べている。

「バルツァを聴いて酔った。通常の名唱ではない。もっと本質的で、もっと天才的な閃光、歌に触発された細胞の叫びともいえようか。彼女を聴いていると、人間の声というものは、本来激情と共にとめどなく走りまわるものであって、われわれが当然のように考えている歌の形とか旋律とかリズムとかは、そのエネルギーを繋ぎ止める鎖ではないかという気さえしてくる。そしてバルツァはロッシーニの『胸の思いは満ちあふれ』、また『不安は涙のうちに生まれて』で、この鎖を断ち切って自在に歌う」
(これは書き写して、僕のスクラップブックに貼ってある)。

旋律やリズムが、感情の暴走をかろうじて繋ぎ止めているなんて、なかなか言えることではない。
でも、とてもよく分かる。
この人に限らず彼ら長老たちは、過去にオーケストラや学究の場での「戦歴」を持つ人々なのだ。
こういう耳と心を持った人たちがサックスを聴いて、本音のところでどう思っているのか。

次代の才能を見出すために、コンクールという催しは大切な役割を担っている。
シニアたちは、寛大な心で若い人たちの演奏に付きあってくれているような気がする。
僕自身も、過去にそうやって見出されたのだという自覚はある。
今回、審査する側に立ってみて思うことは、審査員は若い人の才能を見落とさないようにしなくてはならないということだ。
音楽大学の教員も然り。
自戒をこめてそう思う。


( 2006/01 ← 2005/12 → 2005/11 )


[ 管理者:管理者 ]


- CGI-Island -

Thanks to CGI-StaTion & 手作りCandy