2007/06/25(月)
クリスチナ・ロセッティ
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今日、注文していた本が届いた。 「クリスチナ・ロセッティ詩抄」入江直祐訳(岩波文庫) "Christina Rossetti Selected Poems"(carcanet) ロセッティは、19世紀のイギリスの詩人。 ラファエル前派の有名な画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹。
岩波文庫の方の奥付に、 1940年第1刷発行 2006年第3刷発行 とある。 なんと長いスパンだ。
「歌」という好きな詩がある。 ロセッティの原詩と、二つの日本語訳を書き写してみたい。
入江訳は、戦前の若者が感傷にひたったであろう文語調のもの。 リンボウ先生の訳は、今の僕たちに伝わってくる親しみやすさがある。これには、伊藤康英の曲が付いたものがある。
Song Christina Rossetti
When I am dead, my dearest, Sing no sad songs for me; Plant thou no roses at my head, Nor shady cypress tree: Be the green grass above me With showers and dewdrops wet: And if thou wilt, forget.
I shall not see the shadows, I shall not fear the rain; I shall not hear the nightingale Sing on as if in pain: And dreaming through the twilight That doth nor rise nor set, Haply I may remember, And haply may forget.
「歌」 入江直祐訳
いとしき人よ われ死なば 悲しき歌を やめたまへ、 影濃き松も 薔薇をさへ わが墓の邊に 植ゑませず、 時雨と露に 濡れそぼつ ただ青草を 茂らせよ、 しのびたまふも 忘るるも 心のままに なしたまへ。
日影くもるも われは見ず 雨の雫も かかるまじ、 傷み心に 啼きしきる 鴬さへも きこえまじ、 暮るることなく 明けもせぬ おぼろの闇に 夢見つつ、 君を偲びて 眠らまし 君を忘れて 眠らまし。
「歌」 林望訳
私の大好きなあなた、もし、私が死んだら 私の為に歌わないで、哀しい歌を 私の墓に植えないで、薔薇も あの暗い糸杉も 私の体の上には、青々とした草ばかり いつも雨に潤い、露に濡れて…… そしてもし、心あらば、思い出して そしてもし、心あらば、忘れて
私は何の影も見ない 私は降る雨も感じない 私はあの小夜鳴鳥の いたましく歌う声さえ聞きはしない そうして暮れも明けもしない 薄明かりの中でぼんやりと夢見て もしかしたら覚えているかもしれない そしてもしかしたら忘れているかもしれない
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