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雲井雅人の「小言ばっかり」

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2007/06/26(火)  パイパーズ124号
それは、1991年のことだった。
パイパーズ誌124号のインタビュー記事で、世界的なフルート奏者であるウィリアム・ベネット氏が不思議なことを話しているのを読んだ。
「ラとミを同時に鳴らしたとき、1オクターブ下にラの音が聞こえるはず」と。
これが「差音」とか「結合音」と呼ばれる「第3の音」の存在を知った最初だった。
演奏家として、私がそれを知るのは遅すぎたかもしれない。
しかしそれ以降、彼の提唱する「差音を聴きながらの音づくり」の方法を実践するうち、自分の耳は徐々に開かれていったように思う。
差音がピタッと合ったときの響きは、信じられないほど豊かで魅力的である。
「たった2つの音でかような豊かな音が出せるのなら、この方法で4声がぴったりと合ったなら、さぞや美しいハーモニーが生まれるだろう」と考えて結成したのが、私たち「雲井雅人サックス四重奏団」である。
美しい差音は、ピッチさえ合っていれば出るというものではなく、響きの整った雑音のない音同士でないと上手くいかない。
この共通の認識こそが、私たちの四重奏団を支えるプリンシプルなのだ。


2007/06/25(月)  クリスチナ・ロセッティ
今日、注文していた本が届いた。
「クリスチナ・ロセッティ詩抄」入江直祐訳(岩波文庫)
"Christina Rossetti Selected Poems"(carcanet)
ロセッティは、19世紀のイギリスの詩人。
ラファエル前派の有名な画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹。

岩波文庫の方の奥付に、
1940年第1刷発行
2006年第3刷発行
とある。
なんと長いスパンだ。

「歌」という好きな詩がある。
ロセッティの原詩と、二つの日本語訳を書き写してみたい。

入江訳は、戦前の若者が感傷にひたったであろう文語調のもの。
リンボウ先生の訳は、今の僕たちに伝わってくる親しみやすさがある。これには、伊藤康英の曲が付いたものがある。


 Song   Christina Rossetti

When I am dead, my dearest,
 Sing no sad songs for me;
Plant thou no roses at my head,
 Nor shady cypress tree:
Be the green grass above me
  With showers and dewdrops wet:
And if thou wilt, forget.

I shall not see the shadows,
 I shall not fear the rain;
I shall not hear the nightingale
 Sing on as if in pain:
And dreaming through the twilight
 That doth nor rise nor set,
Haply I may remember,
 And haply may forget.




 「歌」  入江直祐訳

いとしき人よ われ死なば
  悲しき歌を やめたまへ、
影濃き松も 薔薇をさへ
  わが墓の邊に 植ゑませず、
時雨と露に 濡れそぼつ
  ただ青草を 茂らせよ、
しのびたまふも 忘るるも
  心のままに なしたまへ。

日影くもるも われは見ず
  雨の雫も かかるまじ、
傷み心に 啼きしきる
  鴬さへも きこえまじ、
暮るることなく 明けもせぬ
  おぼろの闇に 夢見つつ、
君を偲びて 眠らまし
  君を忘れて 眠らまし。



 「歌」  林望訳

私の大好きなあなた、もし、私が死んだら
  私の為に歌わないで、哀しい歌を
私の墓に植えないで、薔薇も
  あの暗い糸杉も
私の体の上には、青々とした草ばかり
  いつも雨に潤い、露に濡れて……
そしてもし、心あらば、思い出して
  そしてもし、心あらば、忘れて

私は何の影も見ない
  私は降る雨も感じない
私はあの小夜鳴鳥の
  いたましく歌う声さえ聞きはしない
そうして暮れも明けもしない
  薄明かりの中でぼんやりと夢見て
もしかしたら覚えているかもしれない
  そしてもしかしたら忘れているかもしれない


2007/06/24(日)  パイパーズ7月号
パイパーズ7月号に雲カルの記事を載せてもらいました。
アメリカツアーのことを主にしゃべってます。
ヘムケ、マスランカと一緒に写っている写真も載っています。

あのツアーのことを皆さんに報告できたような気がして嬉しいです。
ぜひご覧ください。


2007/06/22(金)  バンジャ
バンジャのワンポイントレッスンのコーナに、今年度は僕が連載しているのですが、毎月青息吐息で締め切りに間に合わせています。

中高生が対象といわれているのですが、そこがいちばん僕にとってむずかしい。
毎回、頭をしぼっています。

自分ができていることを平易な言葉で説明するのがむずかしい。
自分が何ができていて何ができていないかを知ることがむずかしい。
自分が100パーセント正しいかどうかが心もとない。


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