2003/07/03(木)
少年時代『僕はなまら突っ走る』 トノサマバッタ
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北海道に梅雨はない。いつのまにか夏がやってくる。昆虫採集も順調だ。
「今日は空気が乾いているな。トノサマバッタかな…」 と決定し,僕はある場所へ向かった。 トノサマバッタは草地や河原の、ところどころ地面がむきだしになっているような ところに、生息している。それにピッタリの場所が、キリギリスの原っぱから 西へ100メートルほど行ったところにあった。通称「原くんの家の前の空き地」!! 北海道ではよく「山口商店前の原っぱ」とか「自衛隊官舎のところの草むら」 というように人の家などを目印にする事が多かった。バス停の名前すらある。 (僕だけかも。というか他の土地でも当たり前かな?)
トノサマバッタというと鹿児島などで何千万匹と異常発生し、農作物などを 食い尽くしてしまったりと害虫としても有名だが、そんなことはつゆしらず、 僕はあのデカさと,ゆうに50メートルは軽く飛ぶ華麗さ, そしてあのパタパタパタ、という音に魅了された。 トノサマバッタはあるていどの忍耐力があればキリギリスよりは簡単にとれる。 が、しかし見つけるのは大変だ。一応、ジリジリ・・とは鳴くのだが、 他のバッタと似ているため、鳴き声では発見には至らない。
これが僕のあみだした捕獲方法だ! とにかくその辺をうろうろ歩き回る。虫取り網を逆さまに持ち、振り回しながら… そのうちそれに驚いた色んな虫達が逃げ回る。これは凄い。 そんな中…・「パタパタパタ・・」 「出たな!!」 その後はまるでストーカーのように着地地点を追い掛け回す。 始めの元気のいい時は遥か遠くまで飛んでってしまい、体力勝負だ! 空き地を通り越し、近くのスーパの駐車場まで追いかけた事もある。 ひたすら追い掛け回し、疲れた所を虫取り網でサクッと捕まえる。 その時の僕はまるで職人のようだった。大物はゆうに6pを超えた。 彼らは草食のため噛み付きはしないが、口から変な液体をいっぱい出す。 無臭なので気にすることはないが、気持ちが悪い… そんなことを1日やっていると相当な距離を走りまわる事になる。 でも僕にとっては最高に楽しい一時であった。
しかし、それから数年後、その場所は公共施設建設のため突然なくなってしまった。 ある日虫取り網を持って行ったら、草が全部刈られていて、呆然と立ち尽くした事を思い出す。 一番気に入っていた場所だった・・ トノサマバッタ以外にもあらゆる虫が捕れた。 僕以外にも多くの少年達が悲しんだ。ある意味、事件だった。
昨年の夏、現在の家の前でトノサマバッタを見つけた。 暑さで弱っていたらしく、つい追い掛け回し素手で捕まえてしまった。 ・・何も変わっていなかった。持った感触はあの時のままだ! 僕はふっと、「原くんの家の前の空き地」を思い出した。 たとえ、飲みすぎて昨日の記憶がなくなっても、 あの時の、あの場所。僕は一生忘れない…… つづく
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